「葬儀を避ける『友引』、本来の意味は?」
みなさんは、普段、どのぐらい「暦」を意識して生活していますか?昔は、衣替えひとつとっても、旧暦のカレンダーに従って、厳格に守られていたそうです。最近では、一年中室温が快適に保たれていることもあって、季節の移り変わりを肌で実感することも減ってきましたよね。また、冬至に南京を食べたり、端午の節句に菖蒲酒を入れたり、といった暦に合わせた行事を楽しむ人も減ってきているのではないでしょうか?
一方で、普段の生活で暦を気にすることも少なくなってきたとはいえ、「お盆」や「お彼岸」など仏事や冠婚葬祭の場面では、いまでも目にする機会が多いのではないでしょうか。葬儀を避ける日とされている「友引」もそのひとつです。
一般的に「友引」を「友を引く」という意味にとり、葬儀を避ける方が多くいらっしゃいます。友引の日を休業にしている火葬場もあるほどです。
友引は最初からそのような日だったのでしょうか?
友引とは、中国の暦である「六曜(六輝)」の一つで、「先勝(せんしょう)・友引・先負(せんぷ)・仏滅・大安・赤口(しゃっこう)」の6日があります。暦の中では特に有名なもので、カレンダーや手帳によっては、はじめから書いてあるものもありますね。
この六曜、日本には14世紀ごろ伝わったといわれています。三国時代の武将のためであった、いや博奕打ちのために作られた、などいろいろな説がありますが、いずれにせよ友引は「引き分けで勝負なし」という意味でした。また、「ものごとが動かない」という意味もあります。「友を引く」という意味は、まったくありません。
「暦と葬儀」
さて、もともとは「引き分け」だった友引ですが、文字の連想から現在のような「友を引く」という意味になり、その日に葬儀を出すのを避けるようになりました。
とはいえ完全に友引を避けるというのは難しく、さまざまな事情で友引に葬儀を出さないといけないこともあります。また、仏教から生まれた言葉ではありませんから、もともと仏事とのあいだに関連もなく、上記のように本来の意味とも異なりますから、友引を気にせず葬儀を出す地域や個人ももちろんいらっしゃいます。。
ですが、いくら喪主様が気にしないといっても、参列者様が皆様そうであるとは限りません。できるだけそのような儀式の場での不安感は拭いたいものですよね。そこで、地域によっては、友引に出す葬儀の際、棺の中に「共人形」「友人形」という人形を入れておくといった風習があります。
友人形は、まだこの世に残されている親しいご友人の身代わりとして、故人様と一緒に棺に入れられます。これを入れておくことで、友引の葬儀に参列されたご友人たちも安心して故人に思いを馳せ、送ることができるのです。
葬儀の際、どの程度、暦を気にするのかということは人それぞれです。迷ったり、わからないことがあれば、どんなことでもお寺にてお尋ねください。