僧侶が歌う仏教音楽 「声明」とは?

 

「声明」という言葉を聞いたことはありますか? 「せいめい」ではなく、「しょうみょう」と読みます。お寺での法会のような儀式の際、仏典に独特な節をつけて、僧侶が歌うように唱えるもののこと 最近では声明をコンサートのようにステージで披露するような会が増え、また、宗派による声明の違いを味わうような趣味のサークルやイベントもあるそうです。
このように、少し注目を浴びている声明。いったいどうやって生まれ、どのように現代まで伝えられてきたのでしょうか。今回は、美しい仏教音楽ともいえる「声明」についてお話ししたいと思います。

中国仏教とともに伝来

声明は、仏教の起こったインドで生まれ、中国仏教といっしょに日本にやって来ました。実はもともと、インドの学問である「五明(ごみょう)」のひとつだったのです。医学(医方明)、技術論(工巧明)、倫理学(因明)、宗教学(内明)と、もうひとつが音韻学である声明です。
音韻学だった声明は、またたく間に広がり、仏教には欠かせないものになりました。仏法の喜びを表現するのに、声明は必要だったのでしょう。
キリスト教には讃美歌があります。日本ではあまりつなげて考えられていないのですが、世界では仏教の声明はグレゴリオ聖歌と並んで宗教音楽と認識されているそうです。

グレゴリオ聖歌と並ぶ宗教音楽

さて、グレゴリオ聖歌の話が出ましたが、聖歌には楽譜がありますよね。楽譜を読める人ならすぐに歌えると思います。
声明には楽譜がありませんでした。口伝(くでん)といって、師から直接教わる以外に覚える方法はなかったのです。しかし、口だけで正確に伝えていくのはとても難しかったので、楽譜のようなものが生まれました。声明の楽譜もいろいろと試行錯誤の上で改良されてきたようです。そのような工夫の結果、墨譜、博士などと呼ばれる見やすい楽譜ができたのですが、やはり口伝が大きな役割を果たし、直接教わることが必要不可欠となっています。

声明、少し興味を持っていただけたでしょうか? CDも出ているようですが、やはり生で聴いていただくのがよいかと思いますので、興味のある方はぜひお寺に足を運んでいただき、聴いてもらえたらと思います。