【お寺の行事】宗祖御更衣式

 

最近は四季が薄らいだような気持ちになるほど、暑くなるのも寒くなるのもあっという間ですね。いつ衣替えをすればいいのか、困りませんか? 衣替えの終わる前に寒くなって、あわてて冬服を出してくることもあると思います。

季節の変わり目にどの家庭でも行われるこの衣替え、実は日蓮宗では、とても大切な行事なのです。総本山である身延山久遠寺では毎年6月と10月に、「宗祖御更衣式(しゅうそごこうえしき)」という法要が行われます。これは宗祖である日蓮大聖人(ご本尊)の衣替えを行なうもので、蝋燭の灯りの中執り行われる、たいへん厳かな儀式です。冬衣から夏衣、また夏衣から冬衣へ。ご本尊に心地良く過ごしていただくための、また我々にとっても衣への感謝と季節を感じることができる、なくてはならない行事なのです。
今回は、この宗祖御更衣式について、ご紹介いたします。

法要のすすみかた

この法要は久遠時の祖師堂にて行なわれます。全国から集まった檀信徒さんたちが待つ中、学僧の打つ大太鼓の音で始まり、導師、法主猊下、僧侶が入場いたします。このとき、学僧はマスクをして大太鼓を打つのですが、それはご本尊の御更衣の際に息がかからないように、という意味です。
このときはまだ場内は明るいのですが、法主猊下が座られると蝋燭の灯りだけになります。なんとその数は約50本のみ。衣を替えられているご本尊を煌々と照らすわけにはいきませんから、極力暗くするのです。
さて場内が暗くなると、いよいよ僧侶による御更衣が始まります。読経が流れる中、わずかな蝋燭の灯りだけがともされた場内は、幽玄で厳格な雰囲気となります。僧侶が厨子の中におられるご本尊の衣を、次の季節のものへと替えていきます。時間にすると約15分程度でしょうか。御更衣が終わるとまた場内が明るくなり、集まった方みなさんによる御焼香へと移ります。始まってからすべてのご焼香が終わるまで、だいたい50分から1時間となります。

宗祖日蓮大聖人の、衣と食への感謝

このように日蓮宗の大切な行事である宗祖御更衣式ですが、寒いとき、暑いときに着るものを替えることがどれだけ重要な事であるかを再認識するという意味では、一般の方にとっても大事な行事ではないでしょうか。
日蓮大聖人は身延山におられたときに、贈られた衣と食べものに対してたいへんな深い感動と感謝を手紙につづられています。当時の山という環境がそれほど厳しかったのかもしれませんが、ごく当然のように着るものや食べものが溢れている現代のわたしたちも、このような行事に触れることで、季節に応じた衣を着られることのありがたさを再確認できるように思います。
衣替えの季節。エアコンもガスも電気もない時代に少し思いを馳せてみてください。着るものへの感謝の気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。