世田谷さんぽ その2【世田谷美術館】

スポーツの秋、芸術の秋。前回の世田谷さんぽでは、世田谷城址公園をご紹介しましたが、今回は世田谷美術館です。桜の名所である砧公園の一角にあります。1986年開館の、新しい美術館です。

イベントも多数開催の、現代型美術館

美術館そのものが新しいため所蔵コレクションも20世紀以降の作家のものが多く、ポップアートのデイヴィッド・ホックニーや「裸の大将」山下清、2016年の文化勲章をはじめ数々の受賞で知られる草間彌生の作品などがあります。中でもフランスの画家アンリ・ルソーの作品は、神奈川県のポーラ美術館に次いで国内二番目の点数の多さで、ミュージアムショップにはルソー作品をファイルやキャンディにあしらったオリジナル商品が置いてあります。キャンディは「フリュマンス・ビッシュの肖像」のビッシュの顔が一粒一粒に描かれた、とても珍しいもの。もちろんここでしか販売していません。
美術館といえば展示室に絵があって、静かに鑑賞する、という当たり前の情景を思い浮かべますが、ここ世田谷美術館には講堂があり、さまざまなイベントが開催されています。
特に2016年は開館30年ということもあり、12月より「わたしの1986年」と題したトークイベントが出演者を変えて数回開催されます。また、音楽イベントも盛んで、ピアノコンサートやチューバのリサイタルなどを、大きなホールでは味わえない上質のサロンのような雰囲気の中楽しむことができます。
もちろんアート体験のできるワークショップも開催されています。人気なのは「100円ワークショップ」というシリーズ。毎回内容を変え、100円というとってもお手軽な参加費で、本格的な体験ができます。たとえば糸を縦と横に組み合わせるミニ織物体験や、木材で小さなマグネットを作るなど、その都度作品を持ち帰れます。小学生でも安心して参加できるので、とても人気。2017年1月29日までの展覧会開催中は、過去の100円ワークショップからお好みの内容を選んで体験できるそうですよ。

建築家は内井昭蔵

現代的な新しい試みを発信している世田谷美術館ですが、その建築も現代建築の代表作といわれています。建築家は内井昭蔵で、彼はこの世田谷美術館の建築で毎日芸術賞・日本芸術院賞を受賞しています。正三角形のモチーフを多用することで統一感を感じられる、とてもモダンな設計になっています。
さて内田昭蔵は世田谷美術館のほかにも多数の作品をのこしているのですが、その中には日蓮宗の寺院もいくつかあります。総本山である身延山久遠寺の宝蔵も、内田昭蔵の作品なのです。この作品で1977年第18回BCS賞・1980年第24回レイノルズ賞を受賞しています。すばらしいモダンな建築の宝蔵に国宝や重要文化財の古い歴史的な宝物が納められているのを知ると、時間の経過そのものに思いを馳せることができますね。

このように、建築を見るだけでもたいへん意義のある世田谷美術館。芸術の秋に展示品を鑑賞するのも、ワークショップでのアート体験も、ここ一か所で堪能できます。また、行き帰りに砧公園の散策をするのもいいですね。ぜひ、足を運んでみてください。