【お寺の行事】除夜の鐘
一年の終わりといえば、除夜の鐘。冷たい空気のなか町に響く鐘の音は荘厳で、一年を振り返るのになくてはならないものです。
除夜の鐘といえば、煩悩の数である108回をつくものだ、と考えている方がほとんどだと思います。ですが108の煩悩って何なのか、そもそもどうして煩悩の数をつくのか、などの疑問はありませんか? 今回は、すっかり年間の行事として生活に馴染んでいる除夜の鐘について、お伝えしようと思います。
煩悩の数って?
108つの煩悩とは何でしょう? 実は時代、宗派などによって考え方がいろいろあるのです。数も108に限りません。一番小さい数は3、そして一番多く数えると84,000といわれています。しかし今回は除夜の鐘が108回ということですから、代表的な108の数え方をご紹介いたします。
人間には五感と呼ばれる感覚がありますが、その五感を感じる器官、「眼」(視覚)、「耳」(聴覚)、「鼻」(嗅覚)、「舌」(味覚)、「身」(触覚)の5つに、感じることを意識する「意」を加えた6つの器官のことを仏教の分類で「六根(ろっこん)」といいます。この六根にはそれぞれ「好」(気持ち良い)、「悪」(気持ち悪い)、「平」(どうでもよい)の3種の感情があり、またそのそれぞれに、「浄」(迷いがない)、「染」(迷いがある)の2種類の心の働きがあります。ここまでで36種。これらがそれぞれ、前世、今世、来世に生じるため、合わせて108になります。以上はあくまでも一例であり他の数え方もあるのですが、まずはこの数え方を知っていただければと思います。
除夜の鐘のはじまり
除夜の鐘は中国大陸の王朝が宗だった時代(960年~1279年)に日本にやってきたといわれています。「除夜」の夜というのは、暗くてものごとの本質がわからない状態(無明)のことで、それを除くために鐘をつくのです。つまり煩悩の数だけ鐘をつくことで、その煩悩が払われると考えます。
煩悩は毎日あらわれるものですから、日本に来て最初のころは禅宗の寺院を中心に朝夕、毎日2回ずつ108回をついていました。毎日108回を朝と夕に、というのはたいへんですので、現在毎日鐘をつく寺院でも、省略して18回、というところが多いようです。室町時代あたりから大晦日につく現在のような形で、禅宗以外の宗派にも広がっていきました。
ほとんどの寺院で、107回を旧年中、つまり大晦日のうちに、残りの1回を新年につきます。最後のひとつを深夜0時につくことで、きれいに煩悩を取り払われた状態で新しい年を迎えることになります。
大晦日の鐘は、新しい年を安穏な心持ちで迎えられるよう、1年の最後にすべての煩悩を取り払う鐘です。一般の方が鐘をつくことができるお寺もたくさんありますので、ぜひ心の垢を落とすつもりで参加してみてください。また、深夜の澄んだ鐘の音を聞いて、心も澄んでいくのを感じてみてください。