世田谷さんぽ その3【次大夫堀公園】

世田谷には、以前ご紹介した世田谷美術館のように、近現代を代表するようなモダンな建物、施設がたくさんあります。一方で、公園や河川などもふんだんにあり、自然と触れ合うこともできます。さて今回ご紹介する「次大夫掘公園」はモダン建築でも、自然のままの公園でもありません。かつて世田谷で見られていた農村風景や農村での暮らしを再現している公園です。
(写真は世田谷区HPより)

世田谷の農村風景を体感できます

現在の都会の生活からは想像できませんが、この世田谷でも明治時代ごろまでは農村風景が広がっていました。今では当たり前の水道も、だれかが引いてこないとありませんでした。このあたりの農地で使う用水を整備したのが、公園の名にもなっている小泉次大夫です。次大夫は川崎領(現在の神奈川県川崎市)の代官で、1592年から15年もかけて用水路を整備しました。公園内にはその用水路「次大夫堀」を中心に、土蔵をそなえた名主屋敷や民家、水田、火の見櫓などが再現されています。
ただの古い集落の再現ではなく、「生きている古民家」をテーマに作られていますので、自由に屋敷や民家の中に入ることができます。なんと毎日囲炉裏には火が入り、軒下には民具が置かれていて触ることもできるので、まるでそこで暮らしているかのような体験ができます。

田植え・稲刈り体験まで!

普段の次大夫掘公園に行っても充分農村生活の体験ができるのですが、ここでは頻繁に体験型のイベントを開催しています。
不定期で味噌作りや機織り、藍染めやそば打ちなどの体験会があるほか、毎年元日にはコマ、羽子板などのお正月あそびコーナーや甘酒コーナー、また正月飾りの解説会もあり、農村風景の中、伝統的なお正月を味わえます。また毎月一回、「土曜日を楽しもう」というイベントがあり、お手玉作りや紙玉鉄砲作り、昔あそび体験などを子ども中心に楽しむことができます。
一般に向けられたものではありませんが、公園内の水田では実際に田植えと稲刈りが行なわれます。こちらは地元の幼児から小学生、幼児の保護者などが対象で、毎年約1500人が5月に植えた稲を9~10月に刈り取るという体験をしています。

難航した水路の敷設

現在に江戸から明治期の農村を伝える次大夫堀公園ですが、この次大夫掘、かなりの大工事だったようです。あまりの難工事に困った小泉次大夫は、安房国(現在の千葉県)の日蓮宗妙本寺から僧を招来、妙泉寺を建立することで工事完遂を祈願します。そのかいあってか工事は無事終わり、公園に見られるような用水路が完成するわけです。
現在妙泉寺は移設されていますが、川崎市の小杉陣屋にある跡地には観音堂が建てられています。
水の流れを作るという大工事を指揮し、そしてその完成を祈って寺院を建立した小泉次大夫の功績を肌で感じることも、この次大夫公園の楽しみ方ではないでしょうか。