世田谷さんぽ その1【世田谷城址公園】

世田谷さんぽ その1【世田谷城址公園】

世田谷区のこと、特に歴史に関わる場所について、ご紹介したいと思います。

世田谷唯一の歴史公園

世田谷城址公園は世田谷区唯一の「歴史公園」であり、東京都指定文化財になっています。歴史公園とは、文化財の保護と歴史継承を目的として設置された公園のこと。さて、世田谷城址公園にはいったい、どんな歴史があるのでしょうか。ちょっと探ってみましょう。
城址、という名の通り、ここにはかつてお城がありました。その名も「世田谷城」。吉良成高(きらなりたか)が室町時代に築城したといわれています。吉良氏といえば忠臣蔵を思い浮かべるかもしれませんが、残念ながらこちらの吉良家とはかなり遠い家系。元をたどればどちらも足利義氏の子供で兄弟なのですが、それは南北朝のころまでさかのぼるのです。
吉良家は、世田谷城の築城前から世田谷の地に居を構えていました。室町時代が終わり、戦国時代に入ると、吉良家は世田谷城と領地ごと、関東で力を持っていた後北条氏(ごほうじょうし)の庇護下に入ります。そして、豊臣秀吉による小田原征伐の際、後北条氏が滅亡したため、その煽りを受けて、世田谷城も廃城となりました。
その後、使われることのなかったお城ですが、江戸城を改修する際にはこの城の石材が使われたそうです。いまでも空堀や土塁などが残っていて、昔のおもかげを残しています。

公園の自然

世田谷城址公園は歴史だけではありません。園内は広く、丘や谷があり、世田谷百景に選ばれています。遊歩道沿いにはたくさんの樹木があって、夏でも木陰になるので涼しく散歩、ウォーキングを楽しむことができます。とはいえ、この公園はお城の跡ですので、あちこちに高低差があります。実は世田谷城、もともと台地の端っこにあって、その崖が天然の要害となる地に作られていました。そこにお堀の跡や曲輪(くるわ)の跡もあって、坂や段差が多いんですね。そのため、ゆっくりと散歩をしてもけっこうな運動量になります。春や秋の気候の良い時にはお弁当を持って、長めの休憩を取るつもりで出かけてみてはいかがでしょうか。また、この公園はカブトムシ、クワガタムシなどの昆虫採集もできます。昔はあちこちで見かけたものですが、最近は見ませんね。小・中学生のお子さんはぜひこの公園で、昆虫を探してみてください。思わぬ昆虫と巡り合えるかもしれません。

常在寺とのつながり

実は世田谷城は、常在寺ともつながりが深いお城です。常在寺は世田谷城の城主吉良家の菩提寺でありました。また、城主吉良頼康公の十番目の側室となった美しい常盤姫が、他の他の女房たちの妬みを受け、その謀略によって無実の罪を着せられたときに、逃げ込んできたのも常在寺です。常在寺には、そのときに常盤姫が井戸の中に投げ込んだ守り本尊である鬼子母神がいまでも祀られています。また、境内には常盤姫のお墓と、姫にちなんだ鷺草が咲いています。
歴史探訪、ウォーキング、自然との触れ合いに最適の世田谷城址公園。ゆっくりとした休日を過ごしたいときは、足を向けてみてはいかがでしょうか。